旅の便り
‥‥出合いはいつもここから‥‥

私の目に写る風景達を日記に

 

「久高島の旧正月その3」

 

西銘荘に荷物を納め、その後しばらく、おばー達と話していた。いつもここに来ると「コーヒーでもどうねー?」と言われ、しばらく楽しく「ゆんたく」するのだ。話していたら、さっきのおばちゃんはおばーの妹さんであることがわかった。納得。どうりで似ている。妹さんは今日は旧正月で民宿にお客さんも来るので本島から手伝いに来てくれたそうだ。おばーの家は旧年中親戚に不幸があったので行事には参加しないらしい。

ちょうど本島から遊びに来ているおばーの親戚の女の子がいてその子と一緒に正月の行事が行われている「外間殿」まで行った。

外に出ると、ぴゅーっと冷たい風が吹いていた。確かに肌寒いかも・・昨日まで南国の冬を鼻で笑っていた私だが、どうも一日で寒さの感じ方が変わってしまったらしい。「さむいね〜」と言早足で向かった。

 

久高の道は方向さえ分かれば何とかたどり着けるもので、去年の8月に五日間ほど滞在した私は、何となく道を覚えていた。二人で「多分こっちだったよね〜」と言い合いながら外間殿に着いた。

三線を弾く人のブースがあって音響のチェックが行われていたり、着物で着飾った童たちが屯っていたりしている。 外間殿の中では白装束のおじーやおばー達がいて、神事をしてるようだ。 

久高島の旧正月の行事が書かれた本を読んでみたが、その頃とは少し形式が変わっているように思った。

観光客や記者の人達が沢山来ていた。昔は許可がないと撮影できないと言われていたゾーンにまで一般の人達が群がって写真を撮っていた。私も写真を撮りたいのは山々だったが、何となく気が咎めたのでそこには行かなかった。

三線の音チェックが終わり、ようやく祈願が始まった。去年お世話になった久高の酋長こと西銘徳夫氏も三線を持って出ていた。

男の人が二人ずつになって外間殿で祈祷を受け御神酒をもらい、カチャーシーで帰る。踊りが上手な人、踊りたい人は長く踊りそれを見ているのが楽しかった。

雨が急に降り出したり、いきなり晴れ間がさしたり、この日の天気とにかく忙しかった。オリオンビールや魚とシーチキンの和え物などが振る舞われたりしたが、強風による寒さの為、手が出ない。途中、何度か民宿にもどりまた出ていくという事を何度か繰り返しているうちに初日の祈願が終わった。一緒に来ていた女の子は午後の便で帰るということで途中で挨拶をして行ってしまった。

 

一人になった私は、手透きになった酋長のもとへ行って挨拶をする「去年の夏お世話になった高木ですが、覚えてられますが?」

「はいはい、今日きたの?」

「今朝、一番の船で来ました。また後でオウチに遊びに行っても良いですか?」

「今日はたくさんいるよ〜。みんなと一緒に家を回るから三線もっておいでね〜。そのかわり新民謡はダメよ〜」

8月に久高で酋長の前で唄ったとき、私は古い民謡のレパートリーの少なさを突かれていた。

 

「はい、覚悟しときます」

 

久高では旧正月の三が日は三線を持って民家を練り歩くのだ。

それに参加させてもらうことになった!嬉しい!!と、ウキウキしながら西銘荘に戻る途中、道でオモシロイものを目にした。段ボール箱があって、その上に小さい頭が二つ見えている。5,6歳と思われる女の子二人だった。彼女らは自分たちがやっと収まるくらいのこの段ボール箱の中でトランプをしていた。

「カワイイ!」と思わず顔がほころびカメラを手にして近寄った。そして「写真とって良い?」と聴いたのだが、これが蛇足だった。急に意識した二人は段ボールの中に入り込んだまま出てこなくなった。

ヤドカリみたい・・

段ボールの中から元気な声が聞こえた。

「遊んでくれなきゃ、撮っちゃダメ!」と一人が言った。そして一人がべーっと舌をだして出てきた。

「何して遊ぶの?」カメラを向けたとたんまた引っ込む。

「トランプ!スピード!」と一人が言う「草の坂で滑るの!」ともう一人が言う。

「よし、じゃあちょっとだけね。でも、その前に民宿に寄りたいから後で誘いに来てね。西銘荘にいるよ」

 

西銘荘に戻ると、お客さんと思われる女性が一人いて、ハナおばーが三線を弾いていた。

彼女の名前は文子ちゃん。通称ぶんちゃんは長野県の松本から来ているという。今日は西銘荘には泊まらないが、以前お世話になったとかでお土産を持って挨拶に来ていたのだ。人気のハナおばーである。ハナおばーの唄・三線は彼女のリクエストだったようだ。私もゆっくりしたいのは山々だったが、息つく暇もなくさっきのヤドカリシスターズがやって来た。

 

二人に連れられ、芝生の坂を段ボールで滑ったり、お店やさんごっこしたり、ババ抜きをしたりしてかれこれ1時間はたっぷり遊んだ。じゃ、そろそろ帰ろうか?と私が言う度に「うん、バイバイ」と言いながら、両足にぶら下がるので帰るに帰れない

(笑)でもホント、カワイイ。

 

元気なヤドカリシスターズは次なる遊び場所に向かい、クタクタになった私は西銘荘にもどった。

一服していると、今度は予約の二人のお客さんが西銘荘に訪れた。北海道から来た女性、柴田さんと吉田さんは主婦で銅版画家。彼女たちも久高島の持つパワーと西銘のおばーに惚れ込んでここやって来たよう。何だか楽しくなりそう。

 

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